2022年06月17日
薬剤師というと医師の処方箋に基づいて調剤し、患者さんに薬を渡すときに服用時の注意を説明する姿をイメージしがちですが、薬学や化学の専門家として特殊な機関で働くこともあります。そのひとつが警視庁や各道府県警察本部の刑事部に設けられている科学捜査研究所です。ここでは科学捜査研究所での仕事やそのやりがいについて紹介します。
科学捜査研究所とはどんな機関なのか
科学捜査研究所は警視庁や各道府県警察本部の刑事部の附属機関です。一般的にあまり馴染みがありませんが、テレビで聞くことがある科捜研というのがこの機関です。研究機関であり警察署からの依頼を受けて検体や残された痕跡から専門知識を活用して分析し、事件解決の糸口になる結果を導き出します。
科学捜査研究所で働くためには特別な資格は要りませんが分析化学系や生化学系の専門的な知識が求められ、警視庁や警察本部で募集があるときに採用試験を受けて合格する必要があります。採用後は警察学校に入り職員としての心構えや振る舞いを学びますが、警察官ではなく技術職員としての採用なので捜査権はなく勤務も原則として研究所内になります。
科学捜査研究所ではどんな仕事をするのか
科学捜査研究所内での薬事師資格を活かした仕事は主に捜査協力と分析精度を上げるための研究です。捜査協力は大きく法医学系と化学系に分けられ、具体的には法医学系の場合は鑑識官が事件現場や検体から採取した毛根や血痕、唾液などを分析します。
これに対して科学系は薬物使用に関して血液や所持品などを分析して事件解決につながる糸口を導き出します。捜査権がないため実際の事件現場に赴くことは原則ありませんが、分析結果は間接的にまた直接的に事件解決のための証拠のひとつとなり他の様々な証拠同様、結果を導き出すことに役立ちます。
また捜査協力のイメージが先行しがちですが、分析精度を上げるための新しい手法の研究もおこなっており論文の執筆や学術発表をおこなう機会もあります。
科学捜査研究所での仕事のやりがい
薬剤師として科学捜査研究所で働くことのやりがいは、自分が手がけた分析結果を事件解決に役立てられることです。証拠となる分析結果は裁判所に提示されるため自分の活躍で犯罪が立証される、論戦を繰り広げる法廷で化学に基づく揺るぎようのない証拠を提示できるので正義感や達成感を得られます。
またそれによって社会貢献できたという満足感を得ることもできます。給与は各都道府県の地方公務員の俸給で決まっているので難事件解決の糸口を導いたからといって昇級するわけではありませんが階級が上がれば給料も上がります。
民間企業や病院勤務と比較して特に年収が高いというわけではありませんが、公務員なので安定しており専門性を活かすことができる仕事だといえます。